【産経抄】
3月3日2012.3.3 03:23
三波春夫さんの「お客さまは神様です」という決めぜりふが、若いころには、胡散(うさん)臭くて仕方がなかった。きらびやかな和服に包まれた胸の内はきっと違うはず、と勝手に邪推していたが、そうではなかった。
▼兵士として満州で終戦を迎え、シベリアに4年抑留された三波さんは、生きて舞台に立てるありがたさを誰よりも感じていたのだろう。客を神と見立て、常に神前で歌い上げる態度を生涯貫いたからこそ彼をしのぶファンは今も数多い。
▼そんな三波さんの境地には遠く及ばないが、読者からの手紙や電話には教えられることが多い。最近では「河村たかし名古屋市長をなぜ大々的にバックアップしないのか」とお叱りを多数いただいた。
▼河村市長は、中国・南京市からやってきた共産党幹部に、終戦時に南京にいた自分の父親が温かいもてなしを受けたと感謝し、「いわゆる南京事件はなかったのではないか」と述べた。これに中国側が怒り、南京市で開かれる予定だったアイドルグループの公演が中止になる騒ぎとなっている。
▼中国大陸で戦った日本兵に非行がまったくなかったか、といえばそうではあるまい。しかし、三波さんらほとんどの兵士は、軍紀を守って戦った。当時の海外紙も報じたように、中国兵が日本兵の蛮行にみせかけた例もある。ましてや30万人もの市民を虐殺した証拠はどこにもない。
▼戦争への反省を忘れてはならないが、巨大な軍事大国に誇大なぬれぎぬを着せられ続けては、末代まで害が及ぶ。河村市長が提案するように、本音でどんどん話し合うべきだ。小欄も「ぶれずにがんばれ」とエールを送りたい。史実と中国のプロパガンダ(宣伝)の間に一線を引くときがきた。
2012年03月03日
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